男だって生きづらい「キン肉マン」にみる父権社会
団塊ジュニア世代が子供の時に夢中になったアニメのひとつ「キン肉マン」を通じて、この世代が感じているんじゃないかと思うことについて書いています。
1.団塊ジュニアの不運と牧歌的時代
大学受験戦争、就職氷河期に続き、8050問題など、何かと社会を暗い方向でにぎわしてる*1団塊ジュニア世代ですが、私たちにも比較的平和な時代がありました。バブル景気が始まる直前の小学生時代。昭和の家庭に1台しかないテレビの前で毎週楽しみにしているテレビ番組の数々です。今のようにオンデマンドで自分の好きな時に好きな番組を観るどころか、ビデオデッキ*2も普及が始まったばかりの時期で、兄弟姉妹でのチャンネル争いは現役でした。
2.団塊ジュニアが夢中になったアニメ「キン肉マン」
全国の小学生男子を(中心に)夢中にさせたTVアニメ「キン肉マン」。日曜日の10時に全国の小学生はテレビの前に正座待機。キン消しの高額取引やキン肉マン芸人のトークから、他の世代にもじわじわと浸透してきていますが、次々と優良なコンテンツが供給される昨今で、主人公がブサイクで(イケメンの定義には入らないという意味で)100巻近く出ているマンガを今更読もうというのはなかなか腰が重いんじゃないかと思います。
日本に住む人間を超越した存在・超人のキン肉マンことキン肉スグルが、仲間の正義超人と共に、次々に立ちはだかる強敵とリング上で戦っていく、プロレス系格闘漫画。戦うことによって形成される友情の美しさを主眼においており、敵役として登場したキャラクターたちが主人公たちとの戦いの末に仲間になるのが一つのパターンとなっている。また当初は「ダメ超人」と人々にバカにされながらも、地球の平和を守りたいと戦い続けた主人公の成長していく姿も描いている。
読者から募集した超人をマンガで登場させるという、今でいう双方向マーケティングの手法が使われていたり、友情・努力・勝利という少年ジャンプの三大要素を確立した漫画だとか言われています。
3.「キン肉マン」のストーリー構成
1979年~1987年の連載は大きく以下のように分かれます。
- 怪獣退治編~超人オリンピック編
- 7人の悪魔超人編
- 黄金のマスク編
- 夢の超人タッグ編
- キン肉星王位争奪編
ストーリー展開で分けるとこうなります。
物語の構造について。
物語の構造については、こちらのブログ*5から引用させてもらいます。
「とりあえず①悪いやつが来て、②キン肉マンたち正義超人が応戦し、③悪いやつ(の一部)が改心して正義に傾く、その流れで描かれる正義超人や悪魔超人だったキャラクターとの「友情」がアツいよねということで有名になった漫画です。」「その後、次の悪いやつと戦うのではなく、④悪い考えを吹き込んでいたラスボスがやってくるんですね。⑤そいつを倒すことで悪い超人を救うのです。」「ラスボスって言い方は好きじゃないし、(80年代の段階ですでに)古くさい考え方を押しつける、こういったキャラクター像は、父権社会の”父”と呼ぶべきでしょう。時代性としては、『巨人の星』『あしたのジョー』みたいな、”父”に従って主人公が勝つというストーリーから抜け出す意味合いもあったかと思います。」「”父”を倒して、古い価値観から友を救おうという物語を繰り返しながら、話が進んでいくんです。」
4.「キン肉マン」の物語にみる青年期の終わり
キン肉マンは主人公の成長の物語なので、父権社会(家父長制)に対抗する主人公も、いつかは社会体制に取り込まれていくということを暗示しています。青年期の終わり、大人の始まりです。
*1:東洋経済ONLINE「データが示す『団塊ジュニア』悲劇の世代の4苦難」
https://toyokeizai.net/articles/-/643995
https://honkawa2.sakura.ne.jp/2280.html
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%AD%E3%83%B3%E8%82%89%E3%83%9E%E3%83%B3
*4:今からでもわかるはじめての『キン肉マン』教室
http://wpb.cloudpublisher.jp/kinniku_40th/202001140000/archive/009/beginner_003.html
*5:オタクプレゼン大会のススメ⑤「なぜアシュラマンは正義超人になれなかったか-『キン肉マンII世』における父性の問題-」